ディズニーランドから風船が消えるかもしれない理由とは!?
どうも,かなっぺです。
突然ですが,皆さん「ヘリウムガス」って知ってますか?
・・・はい。
「あの声変えて遊ぶやつ」,とか「風船に使われてるやつでしょ」といった声が画面越しに聞こえてきました。
その通りなのですが,実はヘリウムガスって,もっと私たちの生活に深く関わっているんです。
目に見えなくて聞きなれないものでも,意外と私たちの生活に深く根差している。
今回はそんなヘリウムガスの「危機」についてのお話です。
昨年末にこんなニュースがありました。
半導体や光ファイバーの生産に欠かせないヘリウムガス国内最大手の岩谷産業は2019年1月から、販売価格の25%引き上げ交渉に入る。2位の大陽日酸も18年内をめどに25~30%の値上げを打診する。世界生産の半分を占める米国で供給が減る一方、半導体の国産化に力を入れる中国で需要が急増しているためだ。半導体などの生産に影響が及ぶ可能性がある。
ヘリウムガスとは?
そもそもヘリウムって何でしょうか?
ヘリウムは水素に次いで2番目に軽い元素で,それ故に以下のような特徴があります。
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超低温になる
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非常に軽い気体である
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分子サイズがとても小さい
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可燃性がなく安定である
可燃性のある水素に比べて安定であり,これらの利点から半導体原料や光ファイバーの製造やに欠かせません。さらに,検査等に使うMRIの冷却装置としても使われています。
ヘリウムガスの需要と供給
ヘリウムガスは天然ガスの採掘時に副産物として採取されます。それ故生産は資源国に偏っており,アメリカが世界生産の半分を占めています。このアメリカでは,昨年プラントトラブルにより生産量が低下していて,供給が減少してきています。
その一方で,中国では工業化により半導体等の生産のために消費が増えています。
このように需要の増加と供給の減少とが重なって,世界のヘリウムガスは慢性的な供給不足状態に陥っていて,価格が高騰し,さらに今後もその深刻さが増すと考えられています。
ヘリウムガスが不足するとどうなる?
では,ヘリウムが不足することで私たちの生活にどういった影響があるのでしょうか?
ディズニーから風船が消える?
実は2012~2013年頃にも一度プラント修理の影響でヘリウムガスが不足しており,その際にはディズニーランドが風船の販売を中止するといった現象が起きました。今後も半導体等の生産に優先して割り当てる事態になった場合,ディズニーから再び風船が消えることも十分考えられます。
半導体や光ファイバーの生産が滞る?
より深刻なのはIT社会を支える半導体や光ファイバーの生産への影響懸念です。
半導体を使用しているパソコンやスマホの製造が滞ったり,品薄により価格が上昇したりするかもしれません。光ファイバーも新規開通がストップする可能性もあります。
MRI検査が受けづらくなる?
ヘリウムガスはMRI装置の冷却にも使われています。そのためMRIの使用へ影響が考えられますが,こちらの使用は医療分野ですので最優先して供給されると考えられるため,今のところMRI検査が受けづらくなるといった懸念は低いと思います。
ガスクロマトグラフィーでは脱ヘリウムの動き
出来るものはヘリウムガス以外のもので代用しようとする動きも高まっています。
化合物を同定・定量するガスクロマトグラフィーという機器にもヘリウムガスは使われています。この機器を使用する理化学系の研究機関ではヘリウムガスのグレードを下げたり,水素やアルゴン等,代替ガスを用いる方法への切り替えを検討してます。
おまけ:ヘリウムガスでiPhoneが壊れる?
おまけとして,ヘリウムガス関連でこんなショッキングなニュースが報告されています。
iPhoneはヘリウムにさらされると死ぬ - GIGAZINE
iPhoneやApple WatchなどのApple製品が、ヘリウムにさらされると故障し、最悪の場合そのまま文鎮化することが、ある病院の事故から明らかになりました。
日常生活で高濃度のヘリウムにさらされることはありませんが,MRI検査を受けられる可能性がある人は「比較的新しいiPhoneはヘリウムに弱い」という認識を持っておいた方が良いかもしれません。
まとめ
ヘリウムガスの危機についてのまとめです。
- ヘリウムは,その化学的性質から半導体や光ファイバーの製造,MRIに欠かせない。
- ヘリウムの需要が増加し,供給か減少しているために世界的なヘリウム不足に陥っている。
- 不足により日常から風船が消えたり半導体や光ファイバーの生産への影響が懸念される。
- ガスクロを使う研究機関では脱ヘリウムの動きが進んでいる
目に見えなくて聞きなれないものでも,意外と私たちの生活に深く根差していることを知っていただけましたか。